RECIST 1.1 による治療効果判定の正当性
Breast MRI で有名な Christiane K. Kuhl 先生 が筆頭著者の論文です。
目的:
RECIST 1.1による標的病変選択と治療効果判定の関連を調べること。
方法:
- 2015年7月から2017年7月までに行われた前向き試験
- 化学療法の評価目的に撮影された316人、932回のCT検査が対象
- 標的病変は最大5臓器(各臓器最大2病変)選択
- 効果判定のための専用ソフトウェアを用いた
- 読影者間の効果判定(CR, PR, PR, SD)およびPD vs. non-PDかの一致率を測定 (Fleiss κ)
結果:
- 標的病変の選択が検者間で一致していたのは41%(168/316), 59%が不一致
- 標的病変が一致していた場合、治療効果判定の一致率は高かった(治療効果判定:κ = 0.97; 95% CI:0.91, 1.0; PD vs. non-PD:κ = 0.98, 95% CI: 0.90, 1.0)
- 標的病変が一致していなかった場合、治療効果判定の一致率が低下した(治療効果判定: κ = 0.58; 95% CI: 0.54, 0.62; PD vs. non-PD: κ = 0.6; 95% CI: 0.59, 0.70)
- 標的病変選択が一致していた場合、PD判定は97.7%で一致した。一方標的病変が一致していない場合はPD判定は53.3%しか一致しなかった。
結論:
全身化学療法を受けている転移性腫瘍の患者では、異なる癌の部位が同様に標的病変として適しているように見え、したがって標的病変として選択される可能性が高いが、RECIST 1.1 での治療効果判定に一貫性がないあるいは相反する可能性がある。
これはRECIST 1.1 の限られた標的病変が全体的な腫瘍量や治療効果判定を反映していない可能性があることを示している。
感想:
がん患者さんの検査依頼書にRECISTに則ってご評価ください、と記載されていると身構えてしまいます。RECIST 1.1 になり最大標的病変の数が減りましたが標的病変の選択に関しては曖昧な部分があり、当然読影者によってばらつくことが予想されます。
今回の試験では前向きに3名の放射線科医が独立に標的病変を選択しています。まず標的病変の選択が半数以上で一致しません。Table3に対象となった癌腫が載っています。呼吸器癌が31.3%、消化器癌が17.4%、泌尿生殖器癌が9.5%です。肺癌の割合が多いと思います。また転移箇所では肺転移&リンパ節転移が33.9%を占めています。専用のソフトウェアが自動的に病変の最大径を計測するので標的病変が一致さえしていれば治療効果判定がほぼ一致するのは納得できます。標的病変が不一致だった場合にPDなのかPDでないのかについての一致率がκ = 0.6 となっています。治療方針を大きく変えることになるのでこれは大問題です。高額な薬剤選択にも関わる問題です。
筆者は discussion で放射線科医の間で標的病変の選択が一致しないのが問題なのではなく、病変の反応がそもそも一様でないこととRECISTによる標的病変の上限が決まっているのを認識することが重要だと述べています。
解決策として全病変を体積として合算することが考えられますが人間の力では到底不可能です。editorial にもあるように人工知能が解決策になりえますが、そのような高性能の人工知能の開発にはまだまだ時間がかかりそうです。