出産後に見られる仙腸関節の骨髄浮腫は脊椎関節炎に類似する
目的:
分娩後の女性と既知の脊椎関節炎の女性の仙腸関節のMRI所見を比較すること
方法:
前向きの症例対照研究(多施設)年齢でマッチさせた
30人の健康な女性と30人の出産後後の女性および30人の仙腸関節炎の女性の仙腸関節MRIを比較した。
臨床情報は伏せられた状態で以下の採点システムを用いてMRIを読影した。
Spondyloarthritis Research Consortium of Canada (SPARCC) MRI index, Berlin method, Assessment of Spondyloarthritis International Society (ASAS) criteria, and SPARCC MRI structural score
骨髄浮腫、骨侵食、脂肪置換、backfill、強直などの所見の割合、群間及び分娩方法間で比較した。
結果:
産後グループでは、脊椎関節炎グループの女性の86.7%(26/30)と比較して、63.3%(19/30)の女性が仙腸関節周囲に骨髄浮腫を示した(ASAS基準)。産後群では骨侵食はまれであった(分娩後10.0%[3/30]対脊椎関節炎56.7%[17/30])。
脂肪骨髄置換、backfill、および強直は産後グループでは見られなかった。 ASAS基準に基づく仙腸炎のための陽性のMRI所見を有する被験者において、SPARCC MRI指数(平均±SD、13.6±14.5対13.0±10.7; p = 0.818)およびベルリン法(4.5±3.0および5.5±3.5、p = 0.378)産後群と脊椎関節炎群の間で差はなかった。また得点は分娩法間で異ならなかった。
結論:
仙腸関節における妊娠誘発性の骨髄浮腫は、長期の機械的ストレスの結果として、産後初期にMRIを受けた女性の63.3%に存在し、脊椎関節炎の仙腸関節炎に類似する可能性がある。
感想:
この研究に参加した産後の女性は出産7日以内にMRIを撮影しています。仙腸関節に骨髄浮腫が認められたら確かに仙腸関節炎と区別は難しいでしょう。読影はT1強調画像とSTIRの斜冠状断で行っています。実際の撮影では子宮が見えますし、臨床情報からも仙腸関節炎は考えないと思いますが、機械的ストレスによって仙腸関節炎類似の画像所見を示すということがわかった意義はあると思います。
造影CT前の絶食は必要か
目的:
多くの画像診断センターは造影CT前に4〜6時間の絶食を患者に求めている。以前の研究では、長期間の絶食は有害である可能性が示されている。さらに、造影剤のメーカーは検査前に特別な準備は必要ないと主張している。本研究の目的は、がんセンターでの造影CT撮影前の絶食の効果を評価すること。
方法:
3206人を前向きに評価し、無作為に2つのグループに割り当てた。グループ1の1619人の患者は検査前に少なくとも4時間絶食したが、グループ2の1587人の患者は軽い食事をした。造影剤投与前後に観察された有害症状を群間で比較した。
結果:
造影剤投与後に発生した有害事象は、グループ1の患者45人(1.5%)およびグループ2の患者30人(0.9%)によって報告された。最も一般的な症状は悪心(n = 32)、脱力感(n = 12) 、および嘔吐(n = 5)。症状の頻度は、グループ間で統計的に有意な差はなかった(p> 0.05)。
結論:
がん患者を対象とした今回の集団では、造影CT前の絶食の有無に関係なく、ごくわずかな有害症状が報告された。これらの結果は、造影CTのための準備が単純化され、患者が経験する不快感および不便さを減少させることができるという考えを支持する。
感想:
急患では食事の有無は関係なく必要であれば造影剤を使います。予約患者の造影CTを読影していて、「あ、この人お昼うどん食べたな」とかわかることがあります。たぶん造影CT前の絶食は不要なのでしょう。
経皮的肺生検時に穿刺側を下にすると気胸のリスクは減少するか?
目的:
CTガイド下肺生検の手技中に穿刺側を下にする側臥位をとってもらうことで気胸が減るかどうかを調べること。
方法:
2013年11月から2017年8月の間に516人が17Gあるいは18Gの生検針で生検を受けた。全体の気胸の発生率とドレナージを要する気胸の発生率を穿刺側を下にする群(グループA)とそれ以外の体制で行う群(グループB)に分けて比較した。
患者背景と病変の特徴、生検手技内容を含む気胸の危険因子について線形回帰分析および重回帰分析を行った。
結果:
グループAとグループBで気胸の発生率は変わらなかった(21/94 [22.3%] and 95/422 [22.5%], respectively; p = 0.97 )。ドレナージを要する気胸の発生率も変わらなかった(6/94 [6.4%] and 28/422 [6.6%], respectively; p = 0.90)。
重回帰分析の結果、気胸およびドレナージを要する気胸の発生に関する独立した危険因子は穿刺ルートの長さ(p < 0.001 and p = 0.02, respectively)、穿刺ルートに沿った気腫の存在(p = 0.01 and p < 0.001, respectively)、生検針の葉間の通過(p = 0.04 and p < 0.001, respectively)であった。
結論:
後方視的評価の限界を考慮して、気胸の発生率が減少していないように見えるにもかかわらず、重度の喀血患者における対側肺の保護を含む穿刺側側臥位の利点が存在する。
感想:
あまり同意できない内容の論文です。Figure1 で左上葉肺癌の穿刺例が示されています。通常なら仰臥位で最短距離である胸骨脇から刺すはずですが(穿刺ルートの長さは気胸の危険因子なので)、側臥位で行っています。後方視的検討なので穿刺経路の選択について明確な基準がないのですが、CTのガントリーの制約で横から刺すのは得策ではないし、結果的に穿刺ルートが長くなっています。結論では喀血時の対側肺保護に有用と書いてありますが今回の研究では検討していない項目で言い過ぎです。肺気腫がひどくて気胸が必発であるような患者で、なおかつ気胸が起きてもどうしても検体が必要な状況ではこのように穿刺側を下にすることはあるかもしれません。

骨髄炎疑いのCTガイド下生検で培養陽性を予測する因子
Factors Predicting Positive Culture in CT-Guided Bone Biopsy Performed for Suspected Osteomyelitis
AJR Am J Roentgenol. 2019 Mar;212(3):620-624.
目的:
骨髄炎が疑われて施行された骨生検で培養陽性と関連する臨床的、画像的特徴を特定すること
方法:
計997のCTガイド下骨生検をレビューした。骨髄炎疑いの29例の画像とカルテをレビューして年齢、性別、糖尿病の有無、生検時に液体が引けたかどうか、最近の抗生剤治療の有無、白血球数の上昇、平均吸収値が培養陽性に影響するかを調べた。
結果:
29例中、6例(21%)で培養陽性であった。年齢、性別、糖尿病の有無、生検時の液体貯留、最近の抗生剤治療、白血球数の上昇はいずれも培養結果の有無で有意差はなかった。
一方、骨の平均CT値には培養陽性群と陰性群で有意差があった。(陽性群:72.0 ± 41.5 HU (95% CI, 28.4–115.6 HU)、陰性群:227.5 ± 198.8 HU (95% CI, 141.4–313.6 HU) 、p = 0.03)
227.5 ± 198.8 HU (95% CI, 141.4–313.6 HU)
Read More:
https://www.ajronline.org/doi/abs/10.2214/AJR.18.20125?journalCode=ajr結論:
結論:
骨髄炎が疑われた場合の画像ガイド下骨生検の培養陽性率は低い。この研究ではCT値の低さが培養陽性に有意に関連していた。CT値150 HU以上が培養検査の有用性が低くなると予想する閾値として役に立つかもしれない。
感想:
骨髄炎疑いの骨生検の培養陽性率はこれまでの報告では19-43%と低いことが知られていて今回の研究も同様です。私の施設でも計算していませんが近い数字だと思います。
考察で述べられているように、そもそも骨生検による骨髄炎の偽陽性率は40-60%と高い(組織学的に確認している研究で)ので、骨生検で negative でも骨髄炎を否定できません。また、画像的に骨髄炎が疑われ、血液培養で陽性であれば骨生検は不要です。よって骨生検が必要になる症例は画像と臨床所見が不一致、empirical な抗生剤治療あるいは予想される病原菌に適した抗生剤治療に反応しない場合などに限られます。
筆者らは結論として生検部位のCT値が150 HU以上であれば培養陰性の確率が高まるとしています。でもこれが診断や治療に苦慮する例の生検を断る理由にはならないと思います。CT値の測定は実際に骨生検を行った箇所で行っています。もちろん骨髄炎を疑う場所を刺していると思いますが、逆に隣接する高吸収の部位を狙ったほうが培養陽性率が高まるという可能性はないのでしょうか。
今回の研究では骨髄炎疑いだった29例のCTガイド下生検が対象となっています。部位別の内訳は大腿骨が10例、脛骨が5例、足部(中間楔状骨と踵骨)が2例、膝蓋骨が1例、腓骨が1例、骨盤が7例、3例が上肢でした。実臨床でよく問題になる培養陰性の化膿性脊椎炎疑いが含まれていないのが残念です。
RECIST 1.1 による治療効果判定の正当性
Breast MRI で有名な Christiane K. Kuhl 先生 が筆頭著者の論文です。
目的:
RECIST 1.1による標的病変選択と治療効果判定の関連を調べること。
方法:
- 2015年7月から2017年7月までに行われた前向き試験
- 化学療法の評価目的に撮影された316人、932回のCT検査が対象
- 標的病変は最大5臓器(各臓器最大2病変)選択
- 効果判定のための専用ソフトウェアを用いた
- 読影者間の効果判定(CR, PR, PR, SD)およびPD vs. non-PDかの一致率を測定 (Fleiss κ)
結果:
- 標的病変の選択が検者間で一致していたのは41%(168/316), 59%が不一致
- 標的病変が一致していた場合、治療効果判定の一致率は高かった(治療効果判定:κ = 0.97; 95% CI:0.91, 1.0; PD vs. non-PD:κ = 0.98, 95% CI: 0.90, 1.0)
- 標的病変が一致していなかった場合、治療効果判定の一致率が低下した(治療効果判定: κ = 0.58; 95% CI: 0.54, 0.62; PD vs. non-PD: κ = 0.6; 95% CI: 0.59, 0.70)
- 標的病変選択が一致していた場合、PD判定は97.7%で一致した。一方標的病変が一致していない場合はPD判定は53.3%しか一致しなかった。
結論:
全身化学療法を受けている転移性腫瘍の患者では、異なる癌の部位が同様に標的病変として適しているように見え、したがって標的病変として選択される可能性が高いが、RECIST 1.1 での治療効果判定に一貫性がないあるいは相反する可能性がある。
これはRECIST 1.1 の限られた標的病変が全体的な腫瘍量や治療効果判定を反映していない可能性があることを示している。
感想:
がん患者さんの検査依頼書にRECISTに則ってご評価ください、と記載されていると身構えてしまいます。RECIST 1.1 になり最大標的病変の数が減りましたが標的病変の選択に関しては曖昧な部分があり、当然読影者によってばらつくことが予想されます。
今回の試験では前向きに3名の放射線科医が独立に標的病変を選択しています。まず標的病変の選択が半数以上で一致しません。Table3に対象となった癌腫が載っています。呼吸器癌が31.3%、消化器癌が17.4%、泌尿生殖器癌が9.5%です。肺癌の割合が多いと思います。また転移箇所では肺転移&リンパ節転移が33.9%を占めています。専用のソフトウェアが自動的に病変の最大径を計測するので標的病変が一致さえしていれば治療効果判定がほぼ一致するのは納得できます。標的病変が不一致だった場合にPDなのかPDでないのかについての一致率がκ = 0.6 となっています。治療方針を大きく変えることになるのでこれは大問題です。高額な薬剤選択にも関わる問題です。
筆者は discussion で放射線科医の間で標的病変の選択が一致しないのが問題なのではなく、病変の反応がそもそも一様でないこととRECISTによる標的病変の上限が決まっているのを認識することが重要だと述べています。
解決策として全病変を体積として合算することが考えられますが人間の力では到底不可能です。editorial にもあるように人工知能が解決策になりえますが、そのような高性能の人工知能の開発にはまだまだ時間がかかりそうです。
MRI用造影剤 プリモビストの投与で息苦しくなる
少し前の論文ですが意外にも放射線科医でも知らない人が多いので紹介します。
方法:
- 3施設による二重盲検試験
- 44人の健常ボランティアが参加
- Gd造影剤(プリモビストとマグネスコープ)、生食によるダイナミックMRIを撮影
- 被験者と検査技師は造影剤か生食は盲検化された
- 動脈相の息どめ時間と被験者の症状を記録した
- 心拍数、酸素飽和度がモニターされた
- 画像のモーションアーチファクトは3人の放射線科医が評価した
結果:
- 動脈相の息どめ時間はプリモビストで有意に短かった(プリモビスト:mean, 32 seconds ± 19). 生食(mean, 40 seconds ± 17; P < .001)、マグネスコープ(43 seconds ± 21, P < .001)。
- 3人がプリモビストで、1人がマグネスコープで重度のモーションアーチファクトがみられた
- 心拍数と酸素飽和度はどれでも有意差なし
感想:
EOBプリモビストを用いる肝臓MRIで肝心の動脈相だけブレているということがよくありますが、息どめ時間を測定することで確認した試験です。この研究では健常ボランティアが対象ですが実際には肝硬変で腹水貯留している患者さんなどでは息どめはもっと辛いことが予想されます。体動によるアーチファクトを軽減する撮像法を各メーカーが開発しています。息どめ時間が短縮してしまうメカニズムはよく分かっていないようです。今のところ健康被害は報告されていないようですが、Gd造影剤の脳内沈着の問題は記憶に新しく、放射線科医として知っておく必要があると思いました。
放射線科医の仕事
放射線科医のらじ男と申します。卒後11年目の放射線診断専門医です。
放射線医学関連の話題や論文の紹介をしていく予定です。
多くの方には放射線診断科・放射線診断医は馴染みがないと思われるので今回の記事で少し紹介したいと思います。
放射線科は内科、外科、整形外科、皮膚科などと同じように病院の診療科のひとつです。
放射線科の中でも主に画像診断を行う「放射線診断科」とがんを放射線を使って治療する「放射線治療科」の2つに大きく別れます。
放射線診断科の扱う画像の対象は単純X線写真やCT、MRI、核医学検査などがあります。一部の病院では胃カメラなどの内視鏡検査を行う放射線科医もいますが少数です。「放射線」と名前が付いていますが、MRIや超音波検査のように放射線被曝のない検査も担当します。ですから、画像診断医や画像診断部のように呼ばれることもあります。
放射線診断医は画像診断の専門家です。内科や外科の医師が依頼した画像検査をよく見て(読影:どくえい)、報告書を作成するのが主な仕事です。診療放射線技師や超音波検査士は画像撮影の専門家です。ですから患者さんがCTやMRIなどの検査を受ける場合に実際に接することが多いのは検査技師です。
診断に適した画像を撮影する為に検査法の指示を出すのも放射線診断医の仕事です。
現代の臨床現場で画像診断が行われない機会はほとんどありません。
放射線診断医は病院の縁の下の力持ちのような存在です。
日本に放射線科医は4,700人しかいません。アメリカはなんと38,000人もいます。ちなみに日本の内科医が74,000人、アメリカの内科医が160,000人です。いかに日本の放射線科医が少ないかがわかるかと思います。